風邪の後の長引く咳を改善するとされる漢方薬

風邪に対して有効な漢方薬があるように、咳という症状に対して効果を発揮する漢方薬もあります。とくに、風邪を引いた後いつまでも咳が続く「風邪の後の長引く咳」で漢方薬が用いられることが少なくありません。
また、気管支喘息やCOPDが原因でなかなか治まらない咳に対しても、漢方薬が有効であることが知られています(気管支喘息で、発作的な咳や喘鳴が出たときは、ステロイド吸入薬などの西洋薬が必要になります)。

漢方には「気・血・水(き・けつ・すい)」という3つの要素があり、これらのバランスが崩れることで、カラダに不調が現れると考えられています。
たとえば、風邪の後の長引く咳は、カラダから水分が奪われている、漢方でいうところの水のバランスが崩れた、「水毒(すいどく)」という状態が起こっているとされています。そこで、漢方薬でカラダの内側から水のバランスを整えて、気道を潤すことで、咳を出にくくします。加湿器などでのどを潤すことによる咳止め効果を、漢方ではカラダの内側からもたらしているといえるでしょう。

風邪の後の長引く咳を改善するとされる漢方薬
麦門冬湯(ばくもんどうとう)、麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)、五虎湯(ごことう)、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)、竹筎温胆湯(ちくじょうんたんとう)、参蘇飲(じんそいん)など

さらに、気管支喘息やCOPDなどの慢性病を抱えているときの、長引く咳には次のような漢方薬が用いられることがあります。また、咳によって体力が奪われてしまっているようなときは、元気をつける補中益気湯※(ほちゅうえっきとう)などの漢方薬を使うこともあります。

気管支喘息やCOPDで長引く咳を改善するとされる漢方薬
気管支喘息
麦門冬湯(ばくもんどうとう)、柴朴湯(さいぼくとう)、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)五虎湯(ごことう)、神秘湯(しんぴとう)、苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにとう)など
COPD
清肺湯(せいはいとう)、滋陰降火湯(じいんこうかとう)、滋陰至宝湯(じいんしほうとう)、補中益気湯※(ほちゅうえっきとう)など
※咳によって体力が奪われてしまっているような場合


漢方薬のよさは、気・血・水のバランスを整えて気道の状態を良くすることで、咳を止めていくところにあります。ただし、小青竜湯や麻杏甘石湯、五虎湯、神秘湯には、麻黄(まおう)という生薬が含まれるため、高齢者や胃腸が弱い人、心臓病をわずらっている人、腎機能障害が進んだ人などは副作用が出やすいので、服用前に医師または薬剤師に相談してください。

漢方の診察では、独自の「四診」と呼ばれる方法が用いられることがあります。一見、ご自身の症状とはあまり関係ないように思われることを問診で尋ねたり、お腹や舌、脈を診たりすることがありますが、これも病気の原因を探るために必要な診察です。